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TAC 基本の「き」

JA全農TAC推進課=取材協力

TACはどのような経緯で生まれ、なにをしているのか? TACと営農指導員や経済渉外との違いは?
ここではそんな疑問にお答えします。

T A Cは「地域農業の担い手に出向くJA担当者」の愛称で、JA・連合会が一体(チーム)となって地域農業をコーディネートするという意味をもつ「Team forAgricultural Coordination」の頭文字が名前の由来です。地域農業の担い手を訪問し、聴き取った情報を基にJAグループとして担い手の課題解決や経営改善につながる事業提案をすることで、担い手との関係強化をめざします。
 担い手を訪問して意見や要望を聴くことがすべての出発点となることから、「とことん(T)会って(A)コミュニケーション(C)」をキャッチコピーに活動しています。

「2015年農林業センサス」によると、約137万7000ある農業経営体のうち、農産物販売金額が1000万円以上の経営体数は約12万6000(9%)、500万円以上でも22万3000経営体(16%)しかありません。上位2割の農業経営体で農業生産の8割をカバーしているといわれ、日本の農業は少数の担い手が農業生産の大宗を占める構造になっています。
 しかし、これらの担い手がかならずしもJAの事業を利用しているわけではありません。生産資材の購買、農産物の販売とも、有利な条件での取り引きを模索した結果、JAの事業を利用していない担い手もいます。
 担い手のニーズにJAの事業がマッチしていないと思われていたから、担い手はJAを利用しなくなったのでしょうが、これまではJAの事業を利用していない担い手のもとをJAの職員が訪問することがほとんどなかったため、こうした担い手とJAの関係は希薄なまま、JAも事業を見直す機会を逸してきました。担い手に出向くTACにはこの状況を変えることが期待されています

 TACがまずすることは、担い手のもとを訪問して、その担い手が抱えている悩みや「将来こうありたい」という経営のビジョンを聴くことです。そして、その情報を基に、担い手にたいしてどんなサポートができるのか、解決策を提案します。
 解決策はTACだけで検討するのではなく、JAの各事業部門や連合会とも連携して、JAグループの総合力を発揮した対応を実施します。

 TACは営農指導員や経済渉外とは訪問対象が異なります。営農指導員や経済渉外はJA管内の全組合員を対象に、営農レベルの向上のための支援や資材の供給を行います。一方、TACは、将来にわたり地域農業の中核となりうる担い手をJAが選定し、その担い手のもとに出向いて、担い手のニーズを基に事業提案を行います。
 営農指導員は生産部会などの「品目」に着目し、TACは担い手個々の「経営」に着目しているともいえるでしょう。

 JAがTACを設置して担い手への対応を強化すると、その他の農業者にたいするサービスが低下するのではないかと心配する人がいるかもしれません。しかし実際はその逆です。
 選果場を例に考えてみましょう。一般的に、選果場に運ばれる農産物の量が多いほど農産物一個当たりの選果コストは圧縮されます。農産物を大量に生産している担い手が選果場を利用しなければ、残りの農業者で選果場を運営することになり、農産物一個当たりの選果コストは膨らんでしまいます。
 担い手がJAの事業を利用するか否かは、そのほかの農業者の経営にも大きく影響を与えます。TACにより担い手とJAの関係が強化されることは、そのほかの農業者にもメリットがあるのです。

2015年の基幹的農業従事者数は、約175万。うち65歳以上は約113万で、平均年齢は67歳です。一方、JAの正組合員も70歳以上が4割に達しており、農業、JAとも担い手の世代交代期に入っています。
 TACが訪問する担い手は、JAごとに管内の状況を分析して決定しますが、これからの地域農業、そしてJAの担い手となるJA青年組織の盟友は、TACの訪問対象に当然含まれていなければなりません。仮に親世代が健在で、経営が継承されていなくても、悩みやビジョンを盟友とTACが共有しておくことは関係強化につながります。
 もし、まだJA青年組織の盟友を訪問先にしていない場合は、早期に訪問先の見直しを行うようJAにお願いしたいものです。

 T A Cの仕組みができたのは2008年4月。14年度実績では、全国の274JAがTACを設置し、1819人のTACが約9万6000人の担い手を年間延べ約77万回訪問しました。
 多くのJAがTACを設置し、活発に活動しているように思われますが、14年度時点の全JA(679)におけるTAC設置率は40%で、TACを設置していないJAのほうが多いのが現状です。

 先述したように、TACを設置しているJA数は全体の4割にとどまっています。もちろん、「TACは必要ない。すでに担い手のニーズをくんだ事業ができており、担い手と強固な信頼関係を築けている」と胸を張れるJAもあるでしょう。
 しかし、多くのJAにおいては、担い手に支持される事業を行い、担い手とともに地域農業を振興するJAになるために、TACは欠かせない存在のはずです。TACが設置されていないJAの盟友は、「ポリシーブック」を通じてTACを設置するように、JAに求めていきましょう。
 また、すでにTACが設置されている各地のJAの、何人かの青年組織盟友に本誌編集部がヒアリングしたところ、「TACが本来担うべき役割とのズレがある」「世代が近いなどの相談しやすいTACがいない」など、担い手が不満を感じている実態も明らかになりました。そうした問題点の改善も「ポリシーブック」で求めるとよいでしょう。


TACについての詳しい情報は、JA全農HPのTAC紹介ページまで 詳しくはこちら

(※『地上』2016年6月号より。)
情報は取材当時のものです。


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