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大地の恵み

赤いルバーブ 町ぐるみで特産化

2016.08.30富士見町ルバーブ生産組合 長野県富士見町(JA信州諏訪管内)

茎が真っ赤に色づくルバーブを町の特産にしようという動きが、富士見町で大きくなってきた。農家も農家でない人も一丸となって生産。多彩な加工や料理作りに挑戦している。

この日、出荷作業の担当だった組合員のみなさん。 出荷作業は、若手組合員が中心となり、輪番で当たる。八ヶ岳が眺望できるこの風景も、富士見町の魅力の一つ

約6aの畑で収穫作業に励む河角さんと妻のリエ子さん。ルバーブの収穫期は5月下旬から10月下旬にかけて。春と秋とでは風味が異なる。春のルバーブは酸味が強くみずみずしい。一方、秋のルバーブは酸味がまろやかになり、赤い色がより鮮明になる。抗酸化作用のあるアントシアニンのほか、カリウムや食物繊維が豊富

始まりは庭先の家庭菜園から

 シベリア原産のルバーブが日本で栽培されるようになったのは明治時代。外国人の宣教師が持ち込んだともいわれている。寒冷地が適地であり、主産地は長野県と北海道だ。大きな葉が広がるルバーブはフキに似た形状で、茎が緑色だったり、根元の部分が赤かったりと、さまざまな品種があるが、長野県富士見町で栽培されているルバーブは、茎全体が赤く色づく珍しい品種だ。この「赤いルバーブ」がいま、町の特産として注目されている。

 茎の部分を食用とするルバーブは独特の酸味があり、ジャムや砂糖漬けなどに加工されることが多いが、あまりポピュラーな野菜ではない。富士見町でも自家用に作られる程度だった。にわかに注目されるようになったのは、12年ほど前。町内に暮らすエンジェル千代子さんが庭で育てていた赤いルバーブが「見た目がきれいで、おいしい」と評判になったのがきっかけだ。
 株を分けてもらいながら自家菜園で育てる人が徐々に増えるなか、町の新たな特産品開発を計画していた行政もルバーブに着眼した。特産化にあたり、町内で栽培している30種類ほどのルバーブから一株を選定するにあたって、エンジェル家の「赤いルバーブ」に勝るものはなかったという。ルバーブは生育の過程で遮光ネットを掛けることで茎全体を赤くすることができるが、この株は露地栽培のままでも赤いルバーブに育つ。ただ、品種名は定かではなく、突然変異らしい。
 そこでエンジェル家から株分けをしてもらい、20人の生産者が結集。平成18年に「富士見町ルバーブ生産組合」を立ち上げ、本格的な栽培が始まった。
 赤いルバーブを町の特産にするべく、生産組合と行政が連携しているのも富士見町の特徴である。とくに行政が力を入れているのが、販路開拓だ。珍しい食材を求める大手デパートやホテルなどへ積極的に営業をかけ、関東から関西方面へと販路を広げている。それにともない生産者も増え、現在の組合員は約90人。年間の生産量は25tを誇るまでになったが、「ルバーブはたんなる特産品という位置付けではありません」と組合長の三宅満さん。
「高齢者の生きがい対策、そして遊休農地の活用も視野に入れた活動で、地域おこしの一環でもありますね」
 実際、組合員の多くは60歳以上であり、平均年齢は67歳。多年草であるルバーブは5年を目安に株を更新していくが、無農薬でも育てることができるなど、あまり手間がかからないため、高齢者でも新規に始めることができる。

地域のみんなが担い手に 6次産業化で町を活性化

組合員の中では最高齢の樋口さん。「毎日の畑仕事が元気の源です」と話す

26年のコンテストの入賞料理を作ってくれた三宅さんの妻のえい子さん

農地を守りながら高齢者も元気に!

 以前は米や野菜を出荷していた河角幸郎さんは、6年ほど前からルバーブを手がけるようになった。
「ルバーブならこの年でも続けられますから。正月に遊びに来る孫たちに土産を持たせてやることもできて、いい小遣い稼ぎになります」
 樋口十四江さんは長年、キクを栽培していた跡地でルバーブを育てている。
「ルバーブはボケ防止のため。畑に来ればなにかしら仕事があるから」
 毎朝6時ごろには畑に来て作業をするという樋口さん。「草ひきはたいへんだあ」と語りながらも、どこか喜々としていた。
「野菜も花卉(かき)も作らなくなった畑は荒れていきますが、わずかでもルバーブを育てていれば農地として維持していくことができます。年をとっても現役で働くことが生きがいにもつながる。なにより畑で体を動かすのが健康の秘訣(ひけつ)。医療費の軽減にもなるというわけです」
 と語る三宅さんは、4年前に東京から移住してきた。自家用に6株から始めたルバーブだが、今では600株に。富士見町在住で、組合の活動主旨に賛同する人であれば、だれでも組合からルバーブの株を分けてもらって栽培できる。60代は組合ではまだまだ若手。三宅さんのような移住組・定年帰農組もがんばっている。

塩漬けにしたルバーブをまぶしたおにぎり、パウンドケーキ、求肥、クリームチーズとルバーブのディップなどが並ぶ

洋菓子店「泉屋」では、生クリームにルバーブジャムを加えたロールケーキやシュークリームを販売

ジュースやジャム、レトルトカレーは、お土産に向く

アイデア料理が続々と誕生

 組合には観光業者や飲食店経営者など農家ではない人たちも参加している。それぞれが栽培だけでなく、加工品やルバーブを使ったメニューなどを提供し、地域づくりの一翼を担っているのだ。
 たとえばスキー場を運営している「富士見パノラマリゾート」のメニューは、カレーとソフトクリーム。「ルバーブの酸味を生かすのがコツですね。どちらも年間を通して人気があるメニューです」とレストラン担当の五味豊さん。
 長野県富士見高校園芸科の生徒たちも活躍している。ルバーブを使った「真っ赤な高原カレー」が、26年度、JA全中が主催した「全国高校生 みんなDE笑顔プロジェクト東日本地区大会」で優秀賞を受賞。このカレーを観光協会がオリジナルレトルトカレー「高原の赤いルバーブさわやかカレー」として商品化し、27年6月から販売がスタートした。
 さらに6次産業化に拍車をかけようと26年、組合主催で料理コンテストを開催したところ、町内外から50点の応募があり、そのユニークなアイデア料理に驚いたそうだ。
「ルバーブはジャムや洋菓子、カレーなど洋風にアレンジするケースが多いですが、コンテストでは、和菓子の求肥(ぎゅうひ)とか、塩漬けのルバーブをまぶしたおにぎりとか、和風の提案もありました。こんな食べ方もあるのかと、勉強になりましたね」
 と組合の女性陣。塩漬けのルバーブは梅干しのような風味があり、確かに斬新である。料理コンテストは27年も開かれ、参加者を募集中だ。
「いずれはルバーブ料理のレシピ集にまとめる予定です。気軽に作れる料理を提案していけば、消費の裾野を広げることにもなるでしょ」
 と三宅さん。「赤いルバーブの富士見町」、そう認知される日を地域が一丸となってめざしている。


◎富士見町ルバーブ生産組合
平成18年に設立され、組合員は約90人。組合全体のルバーブ株数は約1万7000株。1人当たりの平均栽培株数は90株(ただし、1000株以上の保有者は除く)。年間の生産量は約25t。関東や関西方面の大手デパート、ホテルなどに出荷するほか、ネット販売、JAや地元の直売所などでも販売している。

※『家の光』2015年9月号から。
情報は取材当時のものです。

取材佐々木 泉
写真福地大亮(家の光写真部)

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